引き続きマイナー話題(契約書)です。
MoU (Memorandum of Understanding)やMoA (Memorandum of Agreement)は共同研究の基本的な文書ですが、読んだだけでは誰が何をやるのか理解できないことが多々あります。理由はシンプルで「誰が」の部分が書かれていないからです。理事長や学長の名前しか出てこないような契約書では、誰が実際に責任をもって研究を主導するのかわかりません。
MoU中では、Research Manager等の名称で担当研究者を特定しておくのが良いと私は思います。「MoUは組織間の包括的契約書であるからトップの名前だけで十分であり、個別の職員の記載は好ましくない」という理由で記載を意図的に避ける流儀もあります。もちろんMoUが実際に包括的研究覚書として機能しており、MoU傘下にPA(Project
Agreement)を設ける場合にはMoUに担当者は不要です。しかし、PAも無いようなMoUは組織間の包括的な共同研究というものではなく、特定の職員のみが参画する単なる共同研究契約となっています(研究機関の職員であれば誰でも知っていることですが)。
担当者を記載することには以下のような利点があります。
1) MoUを読めば担当者を特定できる。
2) Party間の軽微(だが公的)な連絡について担当者にまかせることができる。(担当者間の連絡をMoUで公認することができる)
案文は下記のとおりです。
Article i: Assignment of the Joint Research Managers
The Parties agree to assign the following personnel as Research Managers who are responsible to oversee the efficient management of the Joint Research.
Name of Party-A Research Manager:
Dr. XXX XXX, Position, Affiliation
Name of Party-B Research Manager:
Dr. YYY YYY, Position, Affiliation
In case the Research Manager is unable to conduct their role, the Party of the said person shall no delay to assign the alternative personnel of the equivalent position as the Research Manager.
Article ii: Measures of Agreement
E-mails between the Research Managers constitute written agreement of the Parties stipulated in Articles x, y and z.
1)については明瞭で、契約係が変更になった場合でも、担当研究者を探すことが容易になります。ABS等の問題で何年もあとになってから担当者を探す必要がある場合でも記載があれば容易です。なければ起案などから担当者を探す必要があるでしょう。
2) MoUでは、条文の一部変更、延長・短縮など様々な目的でParty間のagreementまたはconsentを必要とします。それらの合意・同意の重要性は様々ですが、多くの場合、重要性と無関係に一律にParty間のagreement/consentが必要と書かれているものと思います。担当者を指定して、彼らの間の連絡をMoUでの公式な連絡手段として認めることにより、軽微な連絡についてサイナー(学長や理事長)の署名付き文書を交換する必要がなくなります。このようにParty間の連絡を重要性に基づいて分ける方法としては、上記のArticle iiのように軽微な条文を指定してする方法と、合意の種類を"written agreement", と"consent"などに分けておき、Research Managerにはそのうち軽微な方法の連絡を可能とするという方法があります。