2回目の投稿です。
ABSは分かり難さで悪名が高いです。
今回は、なぜABSがわかりにくいのか、私なりのポイントを挙げてみます。
1. 単語の意味が わからない
単純かつ根深いのは、初心者には略称が多すぎることです。ABS, CBD, GR, NP, PIC, MAT, MTA, TK, BSなど枚挙にいとまがありません。定義のある用語も定義されていない用語もありますので、それらが頭に入らないうちは、文章などを読んでも理解するのが困難です。
2. なぜやるのか わからない
わかりにくさというか、そもそもABSを理解する気が起きない人も多いかと思います。その理由の一つは、背景があまり説明されないからではないでしょうか。私がABSのことに興味を持ったきっかけは、あるセミナーでABSの歴史的背景の説明を聞いた時でした。意味不明だったABSというものが、妙に腑に落ちた瞬間でした。
3. 対象が わからない
ABSが理解しにくいもう一つの理由は、手続きが国によって異なるからです。対象物である"遺伝資源”についても、議定書の定義通り理解する国もあれば核酸の配列情報などまで含むとする国もあります。
4. なにをするのか わからない
「名古屋議定書を守りましょう。」と良く言われます。ちょっと気の利いた人は「なぜ個人が条約を守る必要があるのか?」と言うでしょう。「提供国法令を守りましょう。」も良く言われますね。ただ、その法律がどこに書いてあるかは教えてくれないし、そもそも法律を読んでも理解が難しいなど様々なレベルの困難があります。キーワードとなるのは「重層的な対応」です。
5. 守らないと何が起きるのか わからない
一部の研究者は、ABSを知りながら無視しているようです。ただ、ABSが罰則のない規則、または努力事項であって義務でないとすれば、そのような行動をとることも合理的かもしれません。
ABS違反の際に、実際にどのような不利益があるのか(またはないのか)知ることも、対応の動機・対応方法を考える上で、重要です。
6. 他にも似たようなルールがある
ABSの考え方は名古屋議定書だけのものではありません。遺伝資源の利益に関するルールは、ITPGR-FA (食料・農業遺伝資源条約)、UPOV(植物の新品種の保護に関する国際条約)にもあり、UNCLOS (国連海洋法条約)でも議論されています。知財面であれば、TRIPS(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)なども関係があり、遺伝資源の移動という点ではCITES(ワシントン条約)も関係します。ABSの理解と対応にはこれらに関する理解も必要です。
今後の投稿ではこれらについて私の考えを紹介していきたいと思います。