おもしろい契約書の2回目です。
研究者は基本的に契約書が嫌いですね。ただ、実は食わず嫌いではないでしょうか。論文を書くのは論理構造を作っていくのが楽しいですよね。査読も、ここをこうしたらもっと良くなるよー、という発見をするのが楽しいですよね。契約書も論文と同じです。内容の矛盾や落ち度がないか(論理構造)は基本です。読みやすくなるように変更するのもOKです。定型など退屈な部分もありますが、論文でも引用文献リストを作るのは面倒だし、雑誌によって異なるフォーマットもだるいです。
... そんな前置とは関係なく、おもしろい契約の2つ目です。
提供元の大学につっこみ質問はしなかったため、詳細は不明ですが、この契約は二つの問題があります。
二つの正文
署名された書面が二通あればどちらも正文と解釈されると思います。英・和ともに正文とするという契約書もあるようですが、英・和で完全に同じ意味にすることは非常に困難です。文章校閲も2倍以上の作業となるでしょう。遺伝資源が今後どこでどう使われるか可能性がある場合は、日本人同士でもMTA (MAT)は英文のみを正文にするのが良いのではないでしょうか。
今回の例では、英・和で内容が異なる点がわれわれの遺伝資源の受け入れにも影響したので、悩みました。
遺伝資源のリストがない
このMTAは、英文・和文とも移転する資源のリストを添付しないタイプのMTAでした。遺伝資源のリストが付属しないMTAは不完全、と私は思います。そのMTAで何が移転されたのかを当事者間で同意を得ていないのと同じですので、MTAを交わす本来の目的を損ねています。最近の遺伝資源の状況を考えれば、第三者にも遺伝資源を正当な手段で得たことを示すことができることが望ましいです。リストがなければ、本当のMTAなのか、別のMTAを後付けさせているのか、信ぴょう性が無くなります。
契約書へのツッコミはキリがないです。もちろん、私の書いたり直した契約書もどこかで突っ込まれているとは思います。